1章:3話

プレイヤー

ゲームマスター
・モノクロ

プレイヤー
克曇満
めいす
おれつえー
こんにゃく
・名無しドッター

触手の魔物に勝利したヒロイン達は、それぞれ自己紹介と情報交換を終えた。
「鬼ごっこ」を無事に終わらせるため更なる情報を必要とした彼女達は、囮作戦によって魔族を拘束し、コロナに会うための重要な手掛かりを手に入れた。

夕暮れ

ホテルから出て、街へ向かう最中にあなた方の子宮内にある卵が疼き出します。
秋恵以外の4人、まずはダイスを一つ振って下さい。

なっ……いきなりかー

ムニサ:要素不明

= 4

うぁ……疼きが強く……?

らうた:要素不明

= 3

このダイスの値は一体何を示すのでしょう……

よしの:要素不明

= 2

やはり、何かの蓄積値だろうか……
疼く以外には特に体調の変化は無いな。

シャロン:要素不明

= 2

少女達の胎内で何かが蠢く様な気配がした。
5人のヒロインはいずれも未体験の感覚に体を震わせる。

ん……んぅ……ふぅ、さて、今後の件ですが……

そ、そうだな。まずはさっき得たMG速報に書き込まれる暗号についてだが。

MG速報

武衣栄市のまちBBS。
コロナが、今回の「鬼ごっこ」の引っ掻き回し役を募集するためにスレッドを立てて利用している。
利用者はどちらかというとアクティブでマナーの悪い連中が多いようだ。

それでは、暗号についてのアナウンスをします。暗号は
・いつ提示されて
・どんなヒントで
・どこを示すか
まだわかっていません。

なので、それぞれの要素について判定を行ってもらいます。
・寝ずに掲示板を張るための【体力】
・問題を解くための【知力】
・より早く駆けつけるための【運動】または、近くを指定してもらえる【魔力(運)】
で、それぞれ難易度10です。

意外と大変だよー……

皆で同じ所に泊まることで分担できないか? 最後の運動、魔力での判定はどうしても各々してもらうことになりそうだが。

なるほど、皆で得意分野を分担して解く訳ですね。

「お泊り会ってこと? わ、私は全然興味ないけど、するっていうなら参加してあげてもいいわよ。」 

「同じベッドに寝る少女達、か……」

「言い方が嫌らしいな……」

「わたし、門限があって……そろそろ家に帰らなきゃいけないんです。」

「じゃあ、連絡先だけ教えなさいよ。暗号が現れたらメールか電話してあげるわ」

「あ……はい! ありがとうございます! これ、わたしの連絡先です。それじゃお先にわたしは帰りますね」

笑顔で手を振り去っていく秋恵を見送る。
無邪気なその表情に、4人は少し童心に帰った様な気がした。

「さて、泊まる場所ですが……さっきのラブホテルってわけにはいきませんよね。」

「誰の家に泊まりに行くことになるのかしら? う、うちはダメよ、一人暮らしだけど…」

部屋、散らかりすぎて腐海みたいな状態になってるのよね……とてもじゃないけど見せられないわ。

「MG速報を監視するとなると、パソコンも必要だねー。……ネットカフェとか?」

「ふむ、それならウチの事務所を提供しよう。パソコン完備で一人暮らしだ。十分だろう?」

パソコンはあるし、スペースも十分、寝る場所も確保出来ている。条件としては十分だな。
更に、この4人を俺の監視下に置ける意味もある。事務所なら探偵道具もある、うちに連れてくれば俺が一番有利な状況を作れるのは間違いないだろう。

「事務所? ちゃんと横になれる所はあるんでしょうね?」

「ありがたいです。それなら一旦家に戻って準備してきますね」

「お泊りセット、持って来なきゃ…」

ヒロイン達は一旦解散し、準備を整えてきた。
シャロンの事務所は繁華街から若干離れた場所にある。マンションの一室をオフィスとして利用しておりそれほど広い部屋ではないが、学生の少女が自ら構える事務所としては破格の物であり、集まった少女達は目を丸くする。

「……靴はそろえて、うむ……上がってくれ」

「へ、へぇ……結構いいとこ住んでるのね……」

「凄い……本当に探偵の方なんですね……」

「思ったより広いー」

「……信用されてなかったのか」

「いえその、そういう訳ではないのですけど……」

初めは緊張気味に今回の事件について考察していた彼女らであったが、徐々に部屋にも慣れてきたようで学校や日常での出来事をネタに世間話を始める。
普段同年代の女子との付き合いが少ないらうたやシャロンは、話が合う仲間を見つけた喜びで話し声も弾んでいる。
病弱で幼い頃に泊まり会の経験が出来なかったよしのも、またはじめての経験に若干興奮気味だ。
と、そこに空腹を主張する腹の虫が鳴り響き、彼女らの会話を一旦遮った。

「あらあら、ムニサさん。そういえばもうそんな時間でしたね」

現在時刻

現在時刻は19時程。ホテルを出てから2時間程が経過した様だ。

「えへへ……お腹減ったー」

「ふむ……夜は長い、何か作ろうか。ちなみに俺の得意料理はゆで卵だ」

「夕食がゆで卵って……まさか、それだけってわけじゃないでしょうね」

「む……不満か?」

「不満も何も、そんなの夕食じゃないでしょ! あんた、もしかして料理苦手系?」

「らうたさんはお得意なんですか?」

ふむ、折角なので料理の技術力もダイスで判定してみましょうか。
2つのダイスを振って、高ければ高いほど料理が得意とします。

「まぁ、一人暮らしだし人並みには出来るよー」

ムニサ:料理技術

= 9

「母に教わりましたので……料理するのは大好きです」

よしの:料理技術

= 9

「ゆで卵……好きなのだが、ダメだろうか……? 特に固茹でにしたやつが……」

シャロン:料理技術

= 7

「手が荒れそうだから私は料理とかしないの。」

らうた:料理技術

= 5

ムニサとよしのは相当料理上手、シャロンはまぁ人並みと。
らうたは食パンを黒焦げにするレベルの様ですね。

「いいのよ! 料理なんて出来なくても! 現代人は困らないわ!!」

「ムニサさん、手伝ってください。晩御飯がゆで卵だけではちょっとさびしいですし」

「作る作るー。ちゃんとしたものを食べたほうが寝覚めも違うよー」

「……とても残念だ」

では、寝覚めが良くなったことにして、よしのとムニサ二人共好きな能力で判定して下さい。
達成値8に成功したら、この後の【体力】判定は無条件に成功したことにしましょう。

体力

キャラクターの腕力や、元気さを示す数値。体力を判定に用いるスキルや、HPの最大値等に影響を及ぼす。
各キャラクターの体力とHPは以下のとおり。

名前 体力 HP
らうた 6 46
秋恵 3 29
シャロン 2 26
ムニサ 2 26
よしの 1 23

食事ボーナスが付くのですか、ありがたい。
「私は……そうですね この余った御飯でチキンオムライスにしましょうか」

「じゃあ私は何かつけあわせと……スープかな」

「……冷蔵庫の物は適当に使ってくれ、足りなかったら買いに行こう」

「足りない知力は手数でカバー!」運動力判定

ムニサ:運動力判定

運動力(5) + = 12 成功

「できました♪」

よしの:知力判定

知力(6) + = 12 成功

台所に向かった二人は、慣れた手付きで料理を仕上げる。
よしのは完璧な手順と見事な味付けで、ムニサは素早い手先でそれぞれ料理を完成させた。

本日のメニュー

・チキンオムライス
・人参のグラッセ他付け合せ
・キャベツのスープ
計680kcal

「お待たせしました、お口に合うかわかりませんが」

「簡単なものだけど、にんじんのグラッセと、キャベツのスープだよー」

グラッセ……? グラッセって何だ……?
人参のグラッセって言っていたな……ここにある人参料理ということは、オムライスの横に添えてあるこの甘煮の事か……?
これ、グラッセって言うのか……知らなかった……

「野菜料理とオムライスね。もぐもぐ、美味しいじゃない」

「皆、料理出来るのか……俺も練習するべきかな」

「らうたさんも一人暮らしですし、料理の勉強などいかがですか?
良ければお教えしますよ」

「コンビニが近くにあるから大丈夫なの! それよりPCの監視を始めましょ!」

「食べ終わり次第監視を始めよう。片付けはしておくから、そこのパソコンを使っていいぞ」

食事を終え、英気を養った少女達は監視を始める。
シャロンのパソコンを交代交代に覗きこむが、既に睡魔に襲われた者も居る様だ。

「よっし、監視監視ー。眠くなるまでは頑張るよー」

「あの……問題が出題されたら起こして頂いても良いでしょうか……?
眠くなってきてしまいまして……」

「……まだ21時なんだけど。どんだけお利口さんなのよ……」

よしのはトロンとした目つきでパジャマに着替え始めてしまう。

「ちょ、ちょっとよしの、ここで着替えるつもりか!?
こっちの部屋で着替えてくれ、女同士とはいえ流石に……!」

「はぇ……? うーん……」

「おおー……でかい……」

そんな会話をしながら夜は更けていった。
時刻はそろそろ朝方、夜も開けてくる頃。既に大半のヒロインは寝静まっており、監視などどこ吹く風といった様相であった。

「Zzz……」

「すー、すー……」

「こっくり……むー……こっくり……」

「なによ、皆先に寝ちゃって……監視するって話はどこ行ったのよ。
まあいいわ、うちにはインターネット回線なんて引いてないし、普段滅多に触れないパソコンを堪能させてもらいましょう」

「他人のパソコンを覗くなんて初めてだわ。ふむふむ、これがメモ帳、これがインターネットで……?」

これ……シャロンのキーワード?
え、え……なんでこいつ、普通にパソコンに記録してるのよ……探偵にしてはお間抜けじゃない?
まさか、罠……? でも……まぁ、覚えておいて損は無いわね。私が使うのはちょっと怖いから、誰かにやらせれば良いわ。うふふ……!

らうたは慣れない手付きでシャロンのパソコンの内容を漁っていく。
何気なくネットサーフィンをする内、気になるサイトを見つける。

「お、おおー……なにこれ、お尻にも入っちゃってるじゃない……
すごぉ、こんなに太いの入るんだ……」

「君は一体何をしているんだ……」

しまった、一瞬意識が飛んでしまっていた……!
くそっ、見られたか? アダルトサイトを見ているだけなら全く問題は無いのだが……
迂闊だった。事務所に誘導して、こっちの土俵に上げたつもりが……まぁ、まだ見られたとは限らない。それにタッチされなければ問題ない。気をつけよう……

「ぎゃっ!? な、何よ、起きてたの!?
違うのよ、これはその、MG速報を調査してたら変なリンクがあって……ほらここ……ん?」

「人のパソコンで、そ、そういう動画を見るとは……
君は一体どういう神経をしているん……これは?」

早朝

早朝、秋恵宅。 秋恵は布団に潜りながらスマートフォンでMG速報を監視していた。
何度も居眠りを繰り返しながら書き込まれる文字に目を通していると、それらしき内容の書き込みが投稿される。

「むにゃ……んぅ、これ……暗号!?」

秋恵:体力判定

体力(3) + = 14 成功

【体力】判定に無事成功したので、秋恵は投稿を発見することが出来ました。
続けて【知力】判定を行って、暗号が解いてみてください。メガロからヒントを得ているので、目標値は8です。

「あ、なんかわかっちゃったかも!」

秋恵:知力判定

知力(1) + = 12 成功

素晴らしいダイス目ですね。
合流できない事を危惧していたのですが、これなら連絡なしでも問題なく暗号の場所で4人と落ち合えるでしょう。

知力

キャラクターの賢さを示す数値。知力を判定に用いるスキルや、MPの最大値、IVの値に影響する。また、探索中の判定に非常によく用いられる。
各キャラクターの知力とMPは以下のとおり。

名前 知力 MP
よしの 6 10
シャロン 5 8
ムニサ 3 6
秋恵 1 11
らうた 1 6

やった! よーし、出かけよう!
悪の親玉と会いに行くんだからね、気合いれて行かないと……

秋恵はまだ暗い家の中を、あちこちにぶつかりながらこっそりと家を出た。
玄関の前で両親に出くわすが、行き先を適当に誤魔化し事なきを得る。

所変わってここはシャロンの事務所。
暗号の投稿に気付いたシャロンとらうたは、他のヒロイン達を揺り起こす。

「ちょっと、あんたたち、書き込みがあったわよ!」

「……眠い」ごしごし

「……んー……おはよう……ございます」

「ムニサ、よだれ垂れてるわよ……」

「んにゃ……ずずっ」

「おい……よしのくん、大丈夫か? ふらついているが……」

「あー……はい……暗号ですね?」

さて、あなた方も【知力】判定を行って下さい。やはり目標値は8です。

「うー……これはですねー ポリュビオなんとかですねー……」

よしの:知力判定

知力(6) + = 15 成功

「……流石はよしのくんだな、寝ぼけていても余裕か。」

シャロン:知力判定

知力(5) + = 11 成功

「……なるほど」

ムニサ:知力判定

知力(3) + = 10 成功

「な、何て言った? ユニバーサルメルカトル図法……? えーとえーと……」

らうた:知力判定

知力(1) + = 9 成功

素早く暗号を解読した4人は出発の準備を始める。

ポリュビオス暗号

使用する言語の文字を表にし、2つの数字によって一つの文字を表す暗号。

50音表を使い、子音を前の数字、母音を後の数字として表す場合
85 32 55→よしの
というように復号する。

「よし、すぐに各々出られる準備を!」

「うぅ、洗面所をお借りしますね……」

「早くしてよ、よしの! 折角暗号解けたんだから!」

では、最後は、ほかの参加者よりはやくたどり着けるか、秋恵も含め全員で【運動】または【魔力】で判定を行って下さい。目標値は10です。

いそげー!

ここが鬼門なんですよね…

低血圧なの……? 昨日一番早く寝てたような気がするんだけど。

「運動は得意だよ! 朝の運動は気持ちいいね」

秋恵:運動力判定

運動力(5) + = 13 成功

「だっしゅ」

ムニサ:運動力判定

運動力(5) + = 17 成功

「ムニサ……いつの間に着替えたんだ? それに、凄まじい速さ……」

シャロン:運動力判定

運動力(5) + = 12 成功

「運動は得意じゃないけど、案外近くで助かったわね。」

らうた:魔力判定

魔力(4) + = 12 成功

「ちょ……ちょと……ま…………」

よしの:魔力判定

魔力(2) + = 8 失敗

暗号が示した場所は、事務所のすぐ側にある河川敷の橋の下だった。
準備から到着まで最も早かったのはムニサであった。一瞬で着替えを終わらせ、マンションから走り去るその姿は正に忍者の末裔と言うに相応しい様子だ。
逆によしのは身支度に手間取り、朝からの運動に息も絶え絶えになっている。後ろを走るシャロンやらうたから更に離され、徐々にその距離は遠くなっていく。

運動力

キャラクターの素早さや身軽さを示す数値。運動力を判定に用いるスキルや、IVの値に影響する。また、トラップの回避や探索中の判定によく用いられる。
各キャラクターの運動力は以下のとおり。

シャロン 5
ムニサ 5
秋恵 4
よしの 2
らうた 1

「あ、お姉ちゃんたち、おはよー!」

シャロンとらうたの場所に秋恵が合流する。
秋恵は体格の割に足が速く、シャロン達と変わらない速度で目的地へ走って行く。

魔力

キャラクターの持つ神秘的な力を示す数値。魔力を判定に用いるスキルや、MPの最大値に影響する。今回の判定では、どれだけ運が強いかを示す値として使用された。
各キャラクターの魔力は以下のとおり。

秋恵 4
らうた 4
ムニサ 2
よしの 2
シャロン 1

「……秋恵くん、朝早いがご両親は大丈夫か?」

「出掛けに聞かれたけど、早朝ジョギングって言ってきたました!」

「はっ、はっ、秋恵、じゃない……子供は、朝から、元気ね……」

「はあ……はあ……もう、皆さんが、見えなく……
し、仕方ないですね、私はゆっくり行きましょうか」

河川敷に最も先に着いたヒロインはムニサであった。
そこには既に数名の引っ掻き回し役希望の男達と、多くの見物に来た者達が待ち受けており、早朝の河川敷とは思えない人だかりが出来ていた。

「着いったー。って、げげ……」

男達「ん……なんだぁ? 女の子が来たぞ?」

人間の屑

ただのモブかと思いきや、各パラメータが設定されているれっきとしたエネミー。
非常に弱いが群れをなして襲ってくる他、魔物ではなく人間なので倫理的に倒し辛いのが厄介。

男達は奇異の目でムニサを見つめ、周囲を取り囲んでくる。
男達から敵意は感じられないが、これから魔族と戦う心構えで来たヒロインから見れば鬱陶しく思えた。

男達「へへへ……こいつ、服装から察するにヒロインじゃねえか?」
「女の子がこんな所来ちゃって、ひょっとしてレズの子なのかなぁ?」
「いや待てよ、ヒロインだろ。こいつもしかして『鬼ごっこ』の参加者じゃ……?」

「あなた達には関係ないでしょ……どっかいってよー」

ムニサは武器を構えて威嚇する。
大半の男はただの見物人らしく、慌てて包囲を解き距離を取った。
そこに遅れてきた3人が到着する。

「ムニサくん、無事か!? 人集りが見えて慌てて走ってきたが……」

「ぜっ、ぜぇっ……おえぇ、冗談じゃ、ないわよ……」

「ふぁ……朝早くからこんなに人が集まってます……」

4人が河川敷に集まって間もなく、人集りの中心辺りの空間がじわりと歪み、中から見覚えのある金髪の少女が現れた。
相変わらずの赤い眼光を周囲の人間に浴びせ、大勢の男達の中でも全く物怖じしないその態度は、彼女が強大な力を持つ魔族であることを示していた。

コロナ「あらー? 今回はあなたたちなの?」

コロナ

1章1話にて登場したNPC。
夢魔の少女で、ヒロイン達を鬼ごっこゲームへ参加させた張本人。
男も好きな様だ。バイセクシャル?

「出たわね、夢魔……」

「俺達が暗号を解いて……ここにいちゃいけないのかい?」

「現実で見ると……ちょっとかわいいなー」

コロナ「そうねえ。参加者が来ちゃダメって言わなかったものねえ……うーん。
ここに来たってことはあなたたち、他の参加者を犯したいってこと?」

「おか……おかすって、なに?」

「む……いや、そういうわけではない。
この鬼ごっことやら、まだそちらから聞いていないルールがあるんじゃないかと思ってな、問いただしに来たんだ」

コロナ「ルールはあれで全部よー。信用してほしいわ」

「…………」

「……これは我々ヒロインと、貴様ら魔族が戦うゲームだろう?
ならば何故全員助かる方法がない? ルールを見ると我々には敗北する道しか無いように思える。貴様は高みの見物か?」

コロナ「うーん。やりようによっては助かるんだけど……その方法、私が言っちゃうとつまらないじゃない?
高みの見物は否定しないわ。私は女の子が淫らに堕ちていくのを見るのが好きなの。強い力を持った者の特権でしょう?」

「……質問を変えよう。キーワードとやらについてだが、貴様もキーワードを持っているということは無いのか?」

コロナ「私は参加者ではないし、キーワードもないわ。だから、私を倒せば助かるって話でもないわ」

……むう、結構見当違いなことばかり考えていたようだ、一旦落ち着いて考えなおしだな。

「こいつを倒してもダメ……冗談じゃないわ……!!」

コロナ「だって、大真面目だもの。くすくす」

「私も質問ー。鬼扱いのヒロインって今一人だけど、その数を増やす方法はある?」

コロナ「鬼は一人だけで、最後まで変わらないわ」

てことは、鬼は「解放」されないって事かな?
そうなると、全員で助かるためには鬼とそれ以外で異なる「解放」手段が必要になるのかな。

ヒロイン達とコロナが問答を繰り返していると、よしのが河川敷にようやく到着した。
それほど疲れているわけでもない様子で、途中で諦めて歩いてきた事が伺える。

「ふぅ……お、お待たせしました」

コロナ「ほかに質問はあるかしら?」

「……私からも1つ質問があります。いえ、質問というか苦情ですね」

コロナ「何かしら?」

「貴女のはじめたこのゲーム……はっきりと言ってまるで面白くありません」

コロナ「そう? 喜んでくれてる人は多いみたいだけど。
ここに居る男達や、もう『脱落』しちゃった女の子達……くすくす、凄く悦んでたわよ」

「脱落」したヒロイン

全9人の参加ヒロインのうち、2人は既に「脱落」し罰ゲームを受けている。
「つばさ」:らうたに会って、自らのキーワードが『未定』だと自白してしまい脱落。
「こだま」:初日にシャロンが登校する際、既に脱落しており廃人と化した少女。

「例え全員のキーワードが判ったとしても、貴女の提示したルールでは犠牲者が最低でも一人は出てしまいますよね。
私達は魔族を滅ぼす者です。ここにいる誰一人として仲間を犠牲にする選択はしないと思います」

「よしのくん、どうやら全員が助かる手段はあるらしい。手段はわからないが……」

「例えそうだとしても、私達にはその手段を知るための方法があまりに少なすぎます。
抜け道を探すためには、我々ヒロイン自身の体を実験に使わなければなりません。これはゲームとして成り立っていません!」

コロナ「そんなに仲良く助かりたいの? 『脱落』しちゃった子を見たでしょ?
女の喜びを全身で味わって、凄く幸せそうだったじゃない。あんな風になりたいって少しも思わない?」

「お、おもうわけないよ!」

コロナは子供をあやすような不遜な態度で続ける。

「仕方ないなぁ……じゃあ、みんなで助かるヒントを一つだけあげるね。
せっかく合言葉解いたんだもの。少しはご褒美あげないとね」

「ご褒美ですか……そうやって余裕を見せていられるのもいまだけですよ」

コロナ「『抜け』と『脱落』が同時に成り立ったら、どうなるかしら?」

これは……鬼以外の「解放」手段かな。
鬼のことを考慮しなければ至極単純に見えるけど、鬼のことを考慮すると複雑で不確実。円満解決には……まだ不足。
鬼が心を決める前に……なんとかしないと。

「皆で一緒にタッチして、お互いのキーワードを言い合うってこと……?」

「試すのが少々怖い方法ですね……」

らうたとGMの耳打ち会話

GM、確認させてもらうけど。

はい、なんでしょう?

鬼って、他人のキーワードを当てて「脱落」させても「解放」されないの?

はい、されません。明記はされてませんが、「ケイドロに近いルール」と設定されていることから察して頂きたいです。

ふん……なるほどね、わかったわ。

「意外と物分かりの良い奴ね」

「ちょっと良すぎる感もあるが……」

コロナ「例えヒントを手に入れても、あなた達は色々と悩んでくれるでしょう?
そういう子よ、あなた達は。くすくす、この先も楽しませて貰うわ。」

「なるほどねー……」

「お見通しってわけね……物分かりが良いって言ったけどあれ、取り消すわ」

「いざとなったら試せる手段を手に入れられただけでも良しとしよう。
もっと安全な手段を見つけたいところだがね。」

ってことは、お互いにキーワードを言い合ったら私だけが「解放」されずに罰ゲームを受けるハメになるわね。
コロナのあのヒントでは私は助からない。キーワードの言い合いが始まっちゃったら、私だけ参加しないなんて「自分が鬼です」って言ってるような物ね。なんとかしなきゃ、なんとか……!

一同は苦々しい表情でコロナを睨む。
コロナはそれを楽しそうに眺めると、ヒロインたちに背を向ける。

コロナ「じゃ、これでいいかしら。あなたたちがどんな姿を見せてくれるか、楽しみにしてるわ」

「逃げるな、魔族め! やっつけてやる!」

「落ち着くのだ、秋恵……」

「あいつ、逃げてっちゃうよ!  追いかけないんですか!?」

「……悔しいですが、今の私達では……」

奥歯を噛み締めるよしの。
新たな引っ掻き回し役となる男たちに魔法をかけ終えたコロナは、こちらをちらりと見た。
その表情は強大な魔族であることを証明するかのような邪悪な笑みで歪んでいた。

再び周囲の空間が歪み、コロナは消えてしまう。

「……今の私達では敵いませんが、いつか必ず倒してみせます。
この世界のためにも、魔族は殲滅しなければいけません」

「うぅー……」

「泣かないで、秋恵さん。私達5人でこの下らないゲームをクリアし、あの魔族に一泡吹かせてやりましょう。」

周囲は遅れて集まってきた男たちで溢れ、ヒロインたちを取り囲んでいる。
引っ掻き回し役に選ばれた男たちもいるようだが、万全な状態のヒロインたち5人に怖じ気づき、遠巻きに見ているだけに留まっている。

「こいつら全員、私達の『鬼ごっこ』を見にきたわけ?
呆れちゃうわね……」

「うえー、さっきより増えてるよ」

「だが、襲ってくる感じでもないな。
この空気はあまり気持ちいいものではない、早いところ退散しよう」

ヒロイン達は不快な視線から逃れるべく、その場から離れようとする。
しかしその瞬間、不意に胎内の卵が脈動を始める。

「あっ、やだっ……なにこれ、また……!?」

胎内の卵による疼きが発生しました。
各自ダイスを一つ振ってください。

「前回からの間隔が短い……! 孵化の時が近づいているということなのか……?」

シャロン:要素不明

= 3

「くっ……う、収まりましたか」

よしの:要素不明

= 1

「うぁ、あ……あうぅぅっ……♥」

らうた:要素不明

= 4

「…………♥」

ムニサ:要素不明

= 4

「はぅ……あぅう……? 変な感じ……?」

秋恵:要素不明

= 3

3人にバッドステータスが!?

疼き時のダイス結果

= 3
= 7
= 8
= 5
= 8

前回の結果を踏まえると……やはり、蓄積値か?
しきい値は6か、7か……?

ご名答、胎内の卵による淫毒の蓄積値です。
蓄積の結果、らうた、ムニサ、秋恵は《七色の淫毒》相当のバッドステータスを受けて頂きます。

卵の発する淫毒がヒロイン達を蝕む。
らうたはその場でへたりこみ、ムニサはどこか動作がぎこちなくなる。
秋恵は股間の違和感に気付き、恐る恐る手を伸ばしてみる。

「なんだろ、おまたがむずむずする……ひぅっ!? なんか、ある……!?

七色の淫毒

使用タイミング:補助
能力分類:白兵・射撃・魔法
消費MP:4
射程:なし
対象:自分
エネミー専用スキル。
直後の攻撃によって対象のAPかHPに1点以上のダメージを与えた場合、対象に「催淫」「爆乳」「尿意」「ふたなり」の内どれか一つのバッドステータスを付与する。いずれのバッドステータスが付与されるかは受ける側が選択する。
今回のセッションでは、さらに「ミルク」が選択出来る。

「……よしのくん……皆の様子がおかしいようだが」

「コロナに何かされた……? いえそんな様子はありませんでしたし……」

「何よ、これぇ…… くぅ、お腹が、むずむず……」

「らうたくん、大丈夫か? 様子がおかしいのだが……情報も集まったし事務所に引き返そう」

シャロンはへたり込んだらうたの肩を軽く叩いた。
その瞬間らうたの全身に未知の感覚が走り、全身を震わせ声を上げてしまう。
らうたは振り返りシャロンを睨むが、顔は上気し目は潤んでおり、艶かしい雰囲気を纏っている。

バッドステータス:催淫

過剰に性欲が刺激されている状態。
ダイスで行動する判定に-1D6の修正を受ける。

「ひぁっ♥ あ、あぁ……? な、なによぉ……」

バッドステータス:ふたなり

魔族の呪いによって、男根が生やされている状態。
MPの最大値が2減少する。

「なっ…なんだ…変な声を出すんじゃない…(どきどき)」

い、今私タッチされた!? だ、誰に……!?

「ムニサさん、秋恵さんも行きましょう」

「(ふあぁ……らうたお姉ちゃんの変な声聞いたら、お股のが、反応して……)」

卵の疼きに関する詳細

半日に一度、卵が胎内で疼き、蓄積値を得る。
蓄積値が一定の値異常になる度に《七色の淫毒》相当のバッドステータスが付与される。このバッドステータスは解除することが可能だが、シーンを跨ぐ度に再び同じバッドステータスが付与されてしまう。

完全に解除するためには精液を胎内に取り込むか、元凶である卵を胎外に排出しなければならない。

「うう゛ー……体のいろんな所がじんじんする……んんっ♥」

ムニサと秋恵は股間を押さえもじもじしている。
それぞれその理由は違うものの取っているポーズは似通っており、内股で尻を突き出し歩くのが難しい状況だ。
周囲の男はそんな彼女らを見て異変を感じ取り、それまでの態度を変化させる。

男達「おい、あいつら弱ってんじゃないのか?」
「今なら犯れんじゃね、お前行けよ」
「やだよ。怖いよ」

「あ、あぁ……見られてる……♥ 男の人の目線が……刺さるみたいで……
あうぅ、アイドル活動中は、こんなことなかったのにぃ……」

らうた、クライシスアクト発生

蔦梨らうた、《視姦の檻》を宣言。
CP 3→4
SP 3→4
胸0 腰0 尻0 口0 痛0 心3→4

あなたが陵辱される様子を、人の目が、カメラアイが、じっくりと嬲るように見ている。あなたが感じるのは、己の肌が衆目に晒される事への忌避か、それとも見られる事への興奮なのか…………さあ、どちらだろう。

ヒロインクライシス・クライシスアクトより引用。

「まずい状況だ……らうたくん、立って歩けるか?」

「くぅ……スーツが、こすれるだけで……こんな……」

「ムニサさん、秋恵さん、歩けますか?
シャロンさんの事務所はすぐ側です、ここは危険なので避難しましょう」

「う……うん、はやくいこ……」

ムニサ、クライシスアクト発生

蔦梨らうた、《視姦の檻》を宣言。
CP 0→1
SP 0→1
胸0 腰0 尻0 口0 痛0 心0→1

あなたが陵辱される様子を、人の目が、カメラアイが、じっくりと嬲るように見ている。あなたが感じるのは、己の肌が衆目に晒される事への忌避か、それとも見られる事への興奮なのか…………さあ、どちらだろう。

ヒロインクライシス・クライシスアクトより引用。

男達「エロいなあ……犯りてぇ」
「ヒロインは強姦しても騒がれないんだよな……」

恨み言のように卑猥な言葉を投げかける男達を尻目に、ヒロイン達は逃げるように去っていった。

事務所

事務所に戻ったヒロイン達は、淫毒や徹夜作業、強力な魔族と相対した緊張も合いまって疲労困憊している。
口数も少なく、静かな事務所内にらうたとムニサの吐息の音が響いている。

「……ほら、アイスティーだ。顔も赤いし、これを飲んで落ち着いてくれ」

「はぅ……き、気が利くじゃない……頂くわ」

「ありがとう……」

「(トイレで確認してきたけど……お父さんとか、弟のアレが……わたしの、お股に……なんで……?)」

淫毒に冒された少女達は体の不調を隠し切れない。
紅茶を受け取る手は震え、心ここにあらずといった様子だ。

「やはり、少しおかしいな……よしのくん、キミはなんともないか?」

「はい……私はなんとも……」

「個人差がある様だな……つらかったら横になるといい」

「つらいわけじゃない、大丈夫……
全身が火照って……感覚が鋭敏になっている……感じかな。……くっ!」

切ない……切なくって、なにも考えられなくなる……
誰が、どのキーワードなのかも、よくわからないのに……

「わ、わたしは……なんともないですよ?」

「別に私もなんともないわよ。は、早くこの妙なゲームを終わらせましょ……」

皆、気丈に振る舞って……辛いだろうに。
今まで様子を見てきたが、仲間を陥れようとするような素振りは見せないな。らうたくんも含め、案外良い奴ばかりなのかもしれない。
ずっと一人で探偵業を行ってきたが、なんか……こうやって皆で協力して魔物と戦うのも……いいな。
出来れば、5人全員無事でこのくだらないゲームを終えたい……

秋恵はキャミソールで下半身を隠しながら、らうたは内股を擦り合わせながらながら答えた。

「なら良いんだが……無理はしないようにな。さて今後の方針だが」

「全員助かる方法はあるようだ、だが、これを信じていいものか」

「互いにキーワードを言い合う、ですよね……? 危なくて試せませんね……」

「ん、ふぅ……この、お腹の中のモノに関して手掛かりを探さない?
『未定』の子はどうなったのかしら。既に脱落しちゃった子から何か情報を得られないかしら」

「未定」の少女

1章1話にて登場したNPC。
名前はつばさ。キーワードは「未定」。キーワードをらうたに自白したため、その場で罰ゲームを受け廃人と化した。プレイヤー達にルールを教えるために犠牲にされた可哀想な少女。

「なるほど……既に一日経っている。意識はもどってるかもしれないな……廃人になっていなければだが」

「様子だけでも知りたいわ……まだ、お腹に寄生されたままなのか、それともあの時全部外に出て、もう中には残っていないのか……とか。
例え意識が無かったとしても、調べられることはあると思うの」

まず、胎内の卵の中身は全て排出されているのかが気になるわね……
それと、コロナが「解放」と「脱落」をわざわざ言い分けているのは何故かしら? 解放された子にタッチして、キーワードを言ったら何か起きたりしないかしら。
もし「解放」されても、「脱落」されても私にとっては得ね。調べてみる価値はあるはず。

「(あのとき、あの子……あそこを広げられて、膣内から……あぁ、思い出したらまたお腹が熱く……)」

「(やっぱり、お腹の卵のせいなのかな……凄い、変な気分に……、ッ! 気にしたらいけない……)」

「……皆さんの様子を見ていると、あまり悠長にしていて良いのか心配ですね」
今のところ手がかりは、らうたさんの言うように『未定』さんのその後くらいですか?

この場で解除を試してみれば良いのではないでしょうか……
あの魔族、噂通りプライドが高そうでしたから、嘘という事はないと思うのですが……
いえ、猶予はまだ1日残っています。卵の疼きは心配ですが、より確実に解除できるようもうしばらく様子を見ましょう。

『未定』さんは保健室に預けられたから、学校に連絡すればその後どこいったかはわかりそうかな?

そういえば、警察が保護した脱落者も居たはずだ。警察に連絡すれば彼女に関しても調べられそうだな。

私もカルテルと連絡を取ってみます。
念のため、その後情報が入手できてないか聞いてみましょう。

よしのとカルテル

よしのはカルテル「アイアン・メイデン」のエージェント候補。アイアン・メイデンは魔族の殲滅を至上主義としており、よしのもそれに習っている。
非常に大きな組織であり、情報収集能力も高い。

「とりあえず、俺は警察と連絡を取ってみる。よしのくんはカルテルに連絡を取ってみてもらえるか?」

「わかりました、それでは少々失礼します」

シャロンと警察

シャロンはヒロイン探偵として警察とコネクションを持っている。魔族絡みの事件が発生した際には連絡を取り合えるよう、お互いの連絡先を交換している様だ。

「わ、わたしはもう一回トイレ行ってきます……!」

三人はそれぞれ席を外す。残された二人に会話は無く、再び吐息の音がその場を支配した。
部屋の外に出たよしのは携帯電話を取り出し、カルテルの番号を呼び出す。
数コールで受話器が取られ、受付の女性が応答する。よしのは受付に上司への取り次ぎを依頼した。

「お疲れ様です、ふじの……ラピスです」

上司「はい。お疲れ様です、ラピス」

「新たな情報が幾つか手に入りました。まず……」

よしのはここまで手に入れた情報を全て伝えた。

上司「そうですか、よくやってくれました。素晴らしい働きです。
それではこちらで掴んだ情報ですが、あなた達5人以外の鬼ごっこ参加者の詳細がわかりました」

「私達以外……あと2人の参加者が居たと記憶しております」

上司「その通りです。まず、名前は『ひかり』と『のぞみ』。住んでいる場所は……」

上司から、年齢、名前、容姿、2人の住んでいる場所等の詳細が手に入った。
よしのはメモを取りながら話を聞き進めていった。

ひかりとのぞみ

プレイヤー以外で鬼ごっこに参加している、残り二人の参加者。

ひかり

武衣栄市内の一軒家に住む、上流階級の少女。巨乳

のぞみ

武衣栄市内のアパートに一人暮らし。中学生位の年齢と見た目。

「(この二人……話が通じればいいのですが。いきなり戦闘にならないとも限りませんね)
わかりました。情報ありがとうございます」

上司「くれぐれも気をつけるように。相手は明らかに君を上回る力を持った魔族だ。
さらに、君の味方は魔族だけとは限らない。」

「大丈夫です。今の私には心強い味方が居ます。
力を合わせ、必ずこの事件を解決してみせます。」

そう伝えてよしのは通話を終えた。
上司の反応も上々であり、よしのは今回の事件に確かな手応えを感じていた。

シャロンも同様に部屋を出て、よしのから少しはなれた場所で携帯電話を取り出す。
友人よりも仕事相手の方が多く登録されているダイヤルメモから、昨日会った警部の電話番号を探し当てる。

警部「や、やあ、シャロン君か。どうした?」

警部

1章1話にて登場したNPC。
シャロンの知り合いであり、昨日シャロンが学園に赴く途中、事件現場で会った。
その時は中々にハードボイルドな会話を交わしたが……?

「お疲れ様です、警部。ただいま事件の解決に向けて調査中ですが、昨日倒れていた少女に関してそちらに何か進展はありましたか?」

「ああ、進展といえば……うっ」

「………どうしました?」

「ああ、いや。……言いにくいのだが」

電話口の向こうの警部は、何故か呼吸が荒い。
反応も鈍く、シャロンの問いにも答えづらそうに口ごもっている。
不審に思ったシャロンが耳を澄ますと、甲高い女性のあえぎ声が聞こえてくる。

「……女性の声が聞こえるようですが」

警部「その、なんだ。……昨日の少女なんだが、目が覚めたとたんに、男を求め始めてな。
ヒロインの腕力だ、我々も逆らえなくてな……ワシも含めて、警察官が次々に食われまくっておるよ……ハハッ」
少女の声「いいよぉ♥ 電話なんて放っといて、もっと出してぇ!」

少女の声

1章1話にて登場したNPC、こだまの声。
ゲームが開始されてから最も早く犠牲になったヒロインであり、その敗北の様子も描かれることは無かった。人狼で言うと開始時に殺される村人役。

「……そ、そうですか、女性の方から……そうですか……ははは」

呆れたシャロンは乾いた笑いを受話器に浴びせる。
流石にばつが悪いのか、警部は冗談めかしてシャロンに答えた。

「まあ、なんだ。役得だと思っておるよ」

「……女性の方は、会話が成り立たないほど錯乱している状態なのですか?」

警部「会話はできるが、全ての目的が快楽を得ることに向かっているようだ。
淫猥な言葉でしか返事が返って来ない。」

「なんでもいい、何か手がかりになるようなことは言っていませんでしたか?」

警部「手がかりになること……か。『中に出されると、満たされる。もっと早く、いっぱい注いでほしかった』と言ったときは、正気のように見えたな」

中に出されると満たされる

胎内の卵に精液が触れると、卵によるバッドステータスが一時的に解除される。

「……そう、ですか。あ、ありがとうございます……」

警部「ああ、ではまた」

「え……ええ……」

シャロンは電話を切った。

警部……何をしているんだ……

この町の男はろくな奴が居ないわね……

女の子5人を犯すために、早朝からあんなに人が集まっちゃう町ですから……

どうやら敵しか居ないようだ……

所変わってここは事務所のトイレ内。
秋恵は自らの体に起こった変化を確認するため、再びトイレ内でスパッツと下着を脱いでいた。

「ふえぇ……これ、どうしよう……引っ張っても取れないし、触ると……んぁっ!」

股間に出来た小さな陰茎を、指でつまんで確かめて行く。
本人と同様に未成熟なそれは包皮によって厳重に守られており、感覚も非常に鋭敏であった。

「らうたさんとムニサさんを見てたら、なんか膨らんで来ちゃうし……
これじゃ、ち、ちんちん……生えてきたって、バレちゃうよぉ……」

なんとか下着の中に収めようと、握ったり引っ張ったりと試行錯誤しながら秋恵の時間は過ぎていった。

らうたとムニサ

室内に取り残された二人。会話は無く、お互いに目を合わせてもいない。
二人共そわそわと落ち着かない様子で、何度も椅子に座りなおしている。
不意にらうたが顔を上げ、潤んだ目でムニサを見つめる。ムニサもそれに気付き、顔を上げる。数秒の沈黙を挟み、らうたは恐る恐る口を動かした。

「ムニサ……もしかしたら、って思ったんだけど……ムニサもさっきから、お腹の辺り……」

「うん……きゅんきゅんするんだよ……」

ムニサの上気した頬と、やや虚ろな目がそれを強調する。

「実は……私も、さっきから……しかも、その、股のあたりが……ぱんつが……」

「わかるよ……♥ あなたも……おんなじ症状、なんでしょ?」

ムニサは椅子から立ち上がり、愛おしそうな目でらうたに近づく。
らうたは近づいてくるムニサに一瞬警戒するが、身体から来る要求が限界を越えたようで、すがる様な態度でムニサに懇願する。

「自分じゃ、その……股って確認出来ないから……! 怖くて、あの、えっと……どうなってるのか、見て、くれない……?」

こんな事頼んだら……タッチされることになるけど……
だめ、我慢出来ない……! お腹がきゅんきゅんして、苦しい……♥ 大丈夫、きっと大丈夫。このボケ子からは殺気を感じたことないし、私を陥れるなんてしないはず……

「わかった……いいよ……」

「ありがと……その、優しく、頼むわね……」

彼女が鬼の可能性は、十分にある。耳を澄ませムニサ。
私と彼女の肌が触れて、もし彼女がキーワードを呟いたら、すぐにこっちも言ってやるんだ。
『深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ、克曇満』、と……!
相打ちにできる可能性は高くない。逃げたほうが得策。でも……このままじゃ、切ない。寂しい。苦しいの……

らうたは立ち上がり、ふらつく足取りで壁に片手を突いた。
ムニサに向かって尻を突き出し、自由な方の手でスカートを捲り上げる。
晒け出された下着は愛液で湿っており、らうたの秘所に張り付き、その形を淫靡に強調している。

「濡れちゃってるね……ふふ……♥」

「ち、違うのよ……! わたし、こんなこと、したことなんて、ないんだからぁ……」

ヒロイン達の男性経験

5人のヒロイン全員が、処女であるクライシスアクト《純血の証》を所持しており、誰も男性経験が無いことを示している。

「大丈夫、落ち着いて……パンツ、下ろすよー……?」

らうたの下着

リボン付きの白。アイドルの潔白性を意識しているらしい。

「あっ…………♥」

ムニサは下着に指を通し、ゆっくりと下に下ろした。
張り付いた下着が秘所から剥がれる際、らうたは小さく声を上げた。

「糸、引いてるよ……♥」

「み、見ないで……これは、その、あぅ、ううぅ……」

「『見て』って言ったのはあなたでしょー? ふふ、かわいい……♥」

らうたの尻を撫で回す。
女同士感じる場所がわかっている為か、ムニサの尻に対する拘りによるものかはわからないが、尻を這い回るムニサの手はらうたの感じる場所を的確に刺激していく。

「まんまるでシミ一つ無い、綺麗なお尻だね……♥ 嫉妬しちゃう位だよー」

「あっ♥  ふあぁ……♥ あ、ああぁ…………♥」

「ふふふ……腿まで垂れてきちゃってるよ……♥ 悪い子なのは……ここかな?」

ムニサの手が尻肉を割り開き、股の間へと滑り込む。

「ひっ!?」

らうたは慌てて腿を閉め、ムニサの手を挟んだ。
しかしその手は既にらうたの最も大事な場所まで到達しており、彼女の進行を止めることは出来ない。

「大丈夫、恥ずかしがらなくて良いんだよ……
言ったでしょ、私も、同じ、なんたからさ……♥」

「あ、あぁ……♥ だめ、だめぇ……そこは、そこだけは……♥」

「ふふ、女の子の一番の場所、触ってあげる……♥ いくよ……」

「おーい、連絡が取れたぞ!
警察が……いう……には…………」

ムニサが指を伸ばした瞬間、シャロンが部屋に戻ってきた。
らうたは後ろを向いて真っ赤になっているため、まだシャロンに気づいておらず、ムニサは蕩けた表情で振り返り、返事をする。

「あー……しゃろんちゃんー、どうもー」

「………何を」

「らうたちゃんの状態を確認してるんだよー。ほら、こんなに濡れて……♥」

「…………ああ……着替え中か、そうなのか……?」

らうたの尻はシャロンに向かって突き出され、そこにムニサの手が挟まれている。
部屋に戻った瞬間に理解を超えた光景を見せられ、シャロンの頭は一瞬でオーバーヒートした。

「着替えじゃないよー。らうたちゃんが、股間を確認して欲しいって……」

「ムニサ……? あの、どうしたの? 私の……何か……」

動きの止まったムニサを心配し、らうたは後ろを振り返った。
顔を赤くし、完全に固まった状態のシャロンと目が合う。

「…………」

「…………」

「すみません、お待たせしました。カルテルからの情報なのですが…………? どうされたん……です……」

そこへよしのも戻ってくる。
らうたは鳩が豆鉄砲を食らったような顔で立ち尽くし、シャロンは真っ赤になり、ムニサは相変わらず蕩けた顔でらうたの尻を撫で続けている。

「ふふふ……すべすべ……♥」

「ムニサ、あの、ストップ」

「ふぇ?」

「ああ……よしのくん………たすけてくれ、俺の理解を超えた世界だ」

「……ああ、なるほど。そういう事ですか、わかりました」

「どっせえええええええいいい!!」

らうたはその場で変身し、盾を構えて突進した。
きょとんとしたムニサ、何かを理解した顔で頷くよしの、完全にフリーズしているシャロンの順に吹き飛ばし、廊下まで駆け抜ける。

「うぐぁっ!」

「きゃあぁ!」

「いっだ……!」

物音を聞きつけ、秋恵もショートパンツのベルトを締め直しながら走ってくる。

「ど、どど、どうしたの!?」

「きゅー」

「あいたたた……そんなに照れなくても……
大丈夫です。私、そういう方にも理解がありますから」

「ち、ちがうの、これは、ムニサが…!
いや、ムニサは何もしてないけど私も何もしてないし何も起こってないの!」

「ええ、解かります。身体と心の違いに最初は悩むかもしれません。
でも大丈夫……! 2人の想いがあれば、性別の壁なんて……」

「部屋は………よごさないで……くれよ………がくっ」

「そう、何もなかった……がくっ」

「え、ええええ~」

秋恵が部屋を除くと、阿鼻叫喚の様子が広がっていた。
目を回しノビているシャロンとムニサ、やはり何かを悟っているよしの、半泣きで喚き散らすらうた。

「秋恵! その、何も……何も見てないわね!?」

「え、う、うん……」

「それならいいの! さ、さあ、今後の方針について話しましょう!!」

「きゅー……」

「ぐるぐる」

らうたはシャロンとムニサを引きずり、元々座っていた椅子に強引に座らせる。
自らも椅子に腰掛け、強引に話を進める構えを取っている。

「そ、そうだね。これからどうするのかな?
らうたさん、ぱんつ凄い伸びちゃってる……」

「とりあえず、お2人を起こしましょうか?
あ、それから新品の下着がありますので、よろしければどうぞ……」

「あ、ああ……! お気に入りのだったのに…… ぐすん……」

騒ぎの後処理をし、室内に落ち着きが戻ってきた。
ヒロイン達5人は情報整理を再開し、迫り来る脅威に対しての対策を練る。

5人はここ1日半で随分打ち解けた様で、まるで旧知の仲かと思われるような態度で会話を弾ませていた。
このまま無事に危機を乗り越えられるのではないか、5人のうち1人として欠けることなく、大きな怪我を負うことも無くこのゲームを終えられるのではないか……そんな空気がヒロイン達の間に漂っている。
しかし、やはり危機は忘れた頃にやって来る物だ。胎内の卵はそれを主張するかの様に不気味な鼓動を繰り返していた。


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